自動車メーカーや販売店のニュースでよく耳にする「保安基準」。
なんとなく聞いたことがあっても、どの様なことが定められており、どんなことが改定されているのか具体的に知らない方がほとんどではないでしょうか?
「保安基準」は、日々変化する自動車を取り巻く環境に対応しながら「自動車の構造・装置、安全確保及び環境保全上の技術基準」として定期的に見直し改定されています。
今回は、2024年11月から適用される「保安基準」について解説いたします。
この記事を読んでわかること
- 保安基準の目的と概要
- 2024年11月より適用される改定項目
- バックカメラ搭載義務化の解説と対策
保安基準とは?
保安基準の正式名称は「道路運送車両の保安基準」と言い、国土交通省令の一つです。
道路運送車両法において、自動車の構造・装置について、安全確保及び環境保全上の技術基準を定めたもので、いわゆる自動車の設計や性能についてのルールブックのようなもの。
数年に一度受ける「車検」は、この「保安基準に適合しているかどうか」を確認する検査のことを指し、車検で使われるパーツは「保安基準に適合しているパーツ」として「保安基準適合品」と呼ばれています。
近年の自動車技術の発達と、交通事情や社会の変化に対応するため、保安基準は定期的に見直され内容が変更されています。
保安基準の役割
◆安全な自動車の製造…自動車の様々な部分について最低限の性能保証
◆交通事故の減少…安全装置の義務化や、性能基準の向上
◆環境負荷の低減…排ガス規制など有害物質の削減と環境への負荷の軽減
◆公平な競争環境…基準一元化による競争環境の公平化
保安基準の改正概要
今回適用される保安基準は、2024年4月1日以降順次継続生産車に適用される予定でしたが、能登半島地震により車両生産に関連する企業が被災したことから、特例措置として新基準の適用日を同年11月1日に延期されました。
「自動車の安全性向上」「国際基準との調和」「先進技術の導入促進」を目的とし、自動車の安全性向上に大きく貢献することが期待されています。
延期基準及び当初の適用日(主なもの)
延期基準(新基準の内容) | 当初の適用日 |
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延期基準(新基準の内容) | 当初の適用日 |
空気入りゴムタイヤ(表示義務等) | 令和6年4月1日 |
空気入りゴムタイヤの取り付け(規制対象の拡大) | 〃 4月1日 |
側方衝突警報装置(大型車等への装着義務化) | 〃 5月1日 |
後退時車両直後確認装置(装着義務化) | 〃 5月1日 |
側面衝突時の乗員保護(規制対象拡大) | 〃 7月5日 |
後面衝突時の乗員保護(新規要件適用) | 〃 9月1日 |
水素燃料電池自動車(識別表示義務化等) | 〃 9月1日 |
実走行時での排ガス測定(排出量規制強化) | 〃 10月1日 |
自動車の安全性や環境性能の強化
保安基準の新しい内容には、自動車の安全性や環境性能がさらに高まるように様々な点が強化されています。
主な改定点として、以下のものが挙げられます。
運転席からの視界確保(バックカメラの搭載)
後方確認の安全性を高めるため、新型車から継続生産車までバックカメラの搭載が義務付けられました。
バックカメラの画質や表示方法に関する基準も厳しくなっています。
その他、Aピラーの角度制限など、運転席からの視界を確保するための規制が強化されており、死角を減らし安全な運転を支援します。
歩行者保護性能の向上(車両構造の基準強化)
歩行者との衝突時の衝撃を軽減するための構造基準が強化されます。
ボンネットやバンパーなど、車両の構造そのものを改良することで、歩行者の安全を確保するためのパッシブな安全装置の一種です。
これらの変更により、万が一、車両と歩行者が衝突した場合でも、歩行者が負う怪我の程度を軽減することが期待されています。
先進安全技術の導入促進(自動ブレーキや車線逸脱警報など)
自動ブレーキや車線逸脱警報など、先進安全技術の導入を促進するための基準が整備されました。
自動ブレーキは、従来よりも検知範囲が広くなり衝突回避を支援する機能が強化され、車線逸脱防止機能も、より強力にドライバーに警告し復帰を促す機能を強くしています。
排出ガス規制の強化
環境規制が厳しくなるにつれ、排出ガスに関する基準も厳しくなっています。
環境に優しい車両が求められる中、新たな排出ガス規制に対応できなかった車両は生産できなくなります。
サイバーセキュリティ対策の強化
自動車への不正アクセスを防ぎ、安全性を確保するための対策が強化されます。
後退時車両直後確認装置の義務化とは?
「後退時車両直後確認装置」と聞いても、ピンとくる方は少ないのではないでしょうか?
後退時車両直後確認装置とは、バックカメラ・バックモニターなど後方の視界を確保する装置のことです。
国連の自動車基準調和世界フォーラム(WP29)において、「後退時車両直後確認装置に係る協定規則(第158号)」が採択されたことを受け、保安基準の見直しが必要になりました。
また、運転手からの死角が生じやすい車両後退時は、歩行者や障害物への衝突事故が後を絶たず対策が求められています。
この国際的な安全基準の新しい規則導入と、車両後退時の事故を防止するため、後退時車両直後確認装置の義務化が決定しました。
新型車から継続生産車まで、乗用車、バス・トラックなど、ほとんどの四輪自動車がバックカメラ義務化の対象になります。
ただし、二輪自動車、側車付二輪自動車、三輪自動車、カタピラおよびそりを有する軽自動車、大型特殊自動車、小型特殊自動車、被牽引自動車はバックカメラ義務化の対象外です。
バックカメラの要件と装着規定
国土交通省の統計によると、バックカメラの装着率は2022年時点で総生産台数の約70%。今回の保安基準によって新型車・継続生産車においては全ての車両にバックカメラ・バックモニターなど後方の視界を確保する装置が標準搭載されることになります。
では、すでに購入した車両にバックカメラが搭載されていない場合はどうなるのでしょうか?
法令で「義務」を課せられているのは自動車メーカーになります。
すでに購入した車両や中古車については、搭載義務の対象ではありません。
バックカメラが搭載されていなくても引き続き乗ることができますが、将来的に全ての車両にバックカメラの搭載が義務付けされる可能性もあります。
需要が高まり、バックカメラや取付工事価格が上る前に、取り付けを検討されることをおすすめします。
ここで、後付けするバックカメラについて紹介します。
義務の対象となるバックカメラとは?
今回の保安基準で、バックカメラの画質や表示方法に関する基準など厳しくなっています。
購入する際は、義務化の要件を満たしているか必ず確認しましょう。
義務の対象となるバックカメラの要件は以下のとおりです。
①特定エリア内の障害物を確認できること
車両の後方0.3mの位置から3.5m、高さ0.8mの範囲まで障害物を確認できること
②確認手段は、カメラ、検知システム、ミラーによること
一部の車種に関しては、目視、目視とミラーの組み合わせによる確認ができること。
出典:国土交通省「後退時車両直後確認装置に係る基準」
バックカメラの取り付けには注意が必要!
後付でバックカメラを取り付ける場合は、道路運送車両の保安基準の細目を定める告示の「別添20外装の技術基準」や「別添130後方視界看視装置取付装置等の技術基準」に則って装着しなければならず、更に注意が必要です。
・カメラの取り付け位置は、基準範囲内に収まっている。
・運転の妨げにならない位置にモニターが設置されている。
・脱落の恐れなく、適切にカメラやモニターが取り付けられている。
・運転操作の妨げまたはショートなどの危険がない配線となっている。
・ナンバープレートの視認性を妨げる位置にカメラを取り付けない。
保安基準の細目に適合しない製品や方法で装着した場合、車検に通らない可能性があります。
バックカメラを後付で取り付ける場合は、専門業者に相談することをおすすめします。
バックカメラを選ぶポイント
では、後付するバックカメラを選ぶときには、どの様な点に気をつければよいのでしょうか?
チェックポイントは下記4つです。
レンズタイプ
バックカメラのレンズには、距離感が正確に掴める標準レンズと、広い範囲を映し出せる広角レンズの2種類があります。
広角レンズは死角が少なくなる一方、周辺部にいくほど画像が歪むので、初心者や運転が苦手な方には、現実と画像のギャップが少ない標準レンズがおすすめです。
画素数と夜間の視認性
バックカメラを選ぶ際に注意してほしいのが画素数です。
駐車場所が暗い場合や夜間走行の多い方は、目安として30万画素以上のモデルがおすすめ。
画素数が高いほど鮮明で詳細な画像が得られますが、高画質なカメラほど高額です。
配線方式
運転席からリアまでの配線方式には、有線と無線の2種類あります。
有線タイプは、安定した信号伝送が可能ですが配線工事が必要になり、無線タイプは、配線工事が不要ですが電波干渉を受けて信号が不安定になる可能性があります。
設置のしやすさ
設置の難しいモデルを選ぶと、取り付け費用が高額になる場合や配線など収まりが悪くなる可能性があります。
購入までに専任業者に相談することをおすすめします。
各メーカーの対応
保安基準とは、国土交通省令の一つです。
各自動車メーカーは保安基準に照らし合わせた開発を行う必要があります。
保安基準で11月以降に販売される新車に、後方を確認できるバックカメラが標準装備されていなかった場合は「保安基準違反」となり、車両の生産ができなくなります。
新車を購入する場合は、バックカメラが標準装備されているか確認しましょう。
保安基準改定解説のまとめ
ここまで、2024年11月に適用される保安基準について、特に義務化項目となった「後退時車両直後確認装置の義務化」について解説してきました。
国土交通省は、2024年6月にも「大型車のEDR(イベントデータレコーダー)の装着を義務化」を発表しました。
2024年10月からは、車検にOBD検査も義務化されます。
自動車技術の発達と、交通事情や社会の変化に対応するため、保安基準は見直され改定されています。
保安基準は、私たちが安心して自動車に乗るための大切なルールです。
自動車を購入する際や、車検のタイミングで、ご自身の愛車が保管基準を満たしているか確認されてはいかがでしょうか?
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