
2025年上半期では、日本国内の乗用車販売に占めるハイブリッド車(HV)の比率は6割弱に迫り、好調を維持しています。
2024年の国内新車販売に占めるHVの割合は約55%、同時期登録車のHV比率は61.15%となっており、HVが日本の新車市場においてガソリン車を上回る主要なパワートレインとなっていることが分かります。
今や市場の半数を占めるハイブリッド車ですが、ガソリンエンジンと電気モーター両方を使い分けて走行するパワーユニットなだけに、その寿命が気になります。
今回の記事では、ハイブリッド車の寿命についての知識、バッテリーを長持ちさせるコツと交換の目安や費用、各メーカーの保証内容もご紹介します。
目次
ハイブリッド車とは

ハイブリッドとは「組み合わせる」という意味で、ハイブリッド車とは文字通り「2つ以上の動力を組み合わせた車」です。
一般的には、ガソリンエンジンと電気モーターの2つの動力源を使い分けて走る仕組みの自動車を指します。

ガソリンエンジンでは燃費効率の悪い発進時や低速時は電気モーターで走行し、一定の速度になるとガソリンエンジンと電気モーター両方を使い分けて走行する、まさにいいとこ取りのパワーユニットです。
ハイブリッド車(HV)と一言で言っても、モーター単独で走行可能な「主役級」のシステムであるストロングハイブリッド(普通車)と、燃費とアイドリングストップからの再始動をスムーズにする「アシスト役」のシステムであるマイルドハイブリッド(軽自動車)の2種類のシステムがあります。
ハイブリッド車の寿命


ハイブリッド車は、発進時や低速時など電気モーターを使用して走行する車です。
このモーターを動かすのが「駆動用バッテリー」。
HVにはエンジンも搭載されているため、駆動用バッテリーが劣化したからといって、すぐに車が動かなくなるわけではありませんが、バッテリーが完全に故障すると、ハイブリッドシステム全体が停止し、走行不能になるリスクが生じます。
つまり、電気モーターを動かす「バッテリーの寿命」が「ハイブリッド車の寿命」と言えるかもしれません。
ハイブリッド車には「駆動用メインバッテリー」と「補機用バッテリー」の2種類が搭載されています。
バッテリーの寿命が近づけばメーターパネルに「警告」が表示されますが、予めバッテリー寿命を把握しておき、速やかに交換できるように準備しておきましょう。


駆動用バッテリーの寿命
駆動用バッテリーとは、走行に必要な動力となるバッテリーです。
バッテリーの寿命は、保証期間としている初年度登録から5年、または10万km走行がひとつの目安といわれています。
バッテリーの寿命が近づけばメーターパネルには以下の警告が表示されます。
・「ハイブリッドシステムチェック」(または「ハイブリッドシステム異常」
・「ハイブリッドシステム警告灯」(橙色または黄色)
・「マスター警告灯」の点灯とメッセージ表示
この警告が出た場合は、走行不能になる可能性があるため、運転を継続せずに安全な場所に停車しディーラーや整備工場に連絡しましょう。
補機バッテリーの寿命
補機バッテリーとは、ハイブリッドシステムを動かすためのバッテリーです。
寿命の目安は4〜5年ほどとされています。
バッテリーの寿命が近づけばメーターパネルには以下の警告が表示されます。
・「バッテリー警告灯」(赤色の電池のマーク)
・「補機バッテリーの電圧が低下しています」などのメッセージ表示
・ハイブリッドシステムが起動できない(READYランプが点灯しない)
エンジン車でいう「バッテリー上がり」と同じ状態で、車が完全に停止してしまいます。
一般的なバッテリー上がりと同じく、ジャンピングスタートなどで一時的にシステムを起動させることは可能ですが、早急なバッテリー交換が必要です。
ガソリン車のバッテリーとの寿命差


ででは、ガソリン車とハイブリッド車でバッテリー寿命に違いはあるのでしょうか?
ハイブリッド車のバッテリー寿命目安が、駆動用バッテリーで5〜8年、補機バッテリーで4〜5年に対して、一般的なガソリン車のバッテリーは2〜3年とされています。
電気モーターで駆動する分、バッテリーの消費が高いハイブリッド車の方が短寿命のように思いますが、目安寿命でいえば1.5〜2倍程度長持ちします。


ハイブリッド車のバッテリーを長持ちさせるコツ


ここで、ハイブリッド車のバッテリーを長持ちさせるコツをご紹介します。
使い方によって劣化が早く進んだり、劣化を抑制できたりするので覚えておきましょう。
■充電状態を確認し適度な運転をする
バッテリーは、走行中より駐車時など使っていない時のほうが重要です。
過充電や過放電の状態で放置しておくと劣化してしまうので、駐車場に停める前はバッテリーの充電状態を確認し、減り過ぎでもなく残量が多すぎでもないように調整すればバッテリーのダメージを減らせます。
また、長期放置はサルフェーションという現象を引き起こし、充分な充放電の反応が起こりにくくなります。
1~2週間に1回は1時間以上走行し、充電するよう心がけましょう。
■夏の暑さダメージに注意する
バッテリーが最もダメージを受けるのが、高温状態で放置しておくことです。
特に真夏の閉め切ったガレージは高温になりやすいため、より注意する必要があります。
走行中と違ってファンなどによる冷却が行われない駐車時は、暑さによるダメージが負いやすい状況となるため、直射日光を避ける、ガレージの換気をしっかり行うなど、駐車環境に配慮しましょう。
■バッテリー冷却用吸気口を塞がないようにする
ハイブリッド車の駆動用バッテリーは、性能維持のために適切な温度管理が必要です。
バッテリーの近くには、温度が上がりすぎないようにするための冷却用ファン(吸気口)が、後部座席の下やトランクルーム内に設置されています。
吸気口が塞がれた状態が続くと、バッテリーがオーバーヒートしやすくなり、劣化が急速に進むだけでなく、警告灯の点灯(ハイブリッドシステムチェック)の原因になるため、ホコリやゴミが詰まったり、荷物などで完全に塞がれたりしないよう、定期的に確認し、清掃しましょう。
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ハイブリット車のバッテリー交換目安


ハイブリッド車のバッテリーは、生産完了時点から少しずつ容量が減っていき、ある程度走行すれば交換する必要があります。
また、全く乗らない期間が長すぎるとバッテリーにも負荷がかかってしまいます。
特に中古車でハイブリッド車を購入する場合は、状態や修復履歴の他、経過年数と走行距離も必ず確認しましょう。
バッテリーの寿命が近づけばメーターパネルに「警告」が表示されますが、その前に交換時期の目安となるポイントを紹介します。
■燃費の急激な悪化(駆動用)
駆動用バッテリーが劣化すると、電気の力でモーターをアシストできる時間が短くなったり、効率が悪くなったりします。
同じ乗り方をしているにもかかわらず、燃費計の数値が以前より目に見えて悪化していれば、高額な駆動用バッテリーの交換を判断する、最も明確な経済的サインです。
■モーター走行(EV走行)可能距離の短縮(駆動用)
ストロングハイブリッド車(例:プリウス、アクアなど)の場合、バッテリー残量が十分でも、モーターのみで走行できる距離が短くなります。
発進直後や低速走行時に、すぐにエンジンが始動してしまい、モーターのみで走れる時間や距離が短くなった場合、バッテリーが持つ電力を放出する能力(パワー)が落ちているサインになります。
■バッテリーの保証期間(駆動用・補機用両方)
車のバッテリーには必ず保証期間が設けられています。
メーカー側が「バッテリーを安全に使うことができる」と判断している期間なので、保証期間の終了がそのまま交換時期の目安と考えても良いでしょう。
ただし、車を製造してから購入するまでの経過期間や、使用状況によって前後する可能性があります。
■エンジンのかかり具合(補機用)
車はエンジンをかけるときが最も電力を消費します。
十分に電力がある場合はセルモータが短い間隔で回転するのに対し、電力が低い状態ではセルモータの回転は遅くなり、その分エンジンのかかりも悪くなります。
この症状がある場合は、遅くても2~3日中にバッテリーが上がってしまう可能性が高く、早急に交換する必要があります。
■ヘッドライトの明るさ(補機用)
ヘッドライトを始め、車のライトはバッテリーによって点灯しています。
走行中はバッテリー充電されているため明るさに変化はありませんが、停止している時に以前よりも暗く感じたり、明るさが変化したりするようであればバッテリー残量が少ないと判断できます。
ただし、明るさだけでバッテリー残量を見極めるのは難しいので、保証期間やエンジンのかかり具合と照らし合わせると良いでしょう。
■バッテリー液の濁り(補機用)
バッテリーの中にはバッテリー液という無色透明の硫酸が入っており、極板と呼ばれるパーツと化学反応を起こすことで充電や放電を行っています。
その科学反応の結果「硫酸鉛」という物質生まれ、バッテリー液が濁ります。
充電や放電を繰り返し行えば、バッテリー液が濁るのは正常なことなのですが、濁った状態のままでは充電能力も劣化するので、交換を検討した方が良いでしょう。
駆動用バッテリーと補機バッテリーを交換する費用


前項で「バッテリーの寿命」が「ハイブリッド車の寿命」と紹介しましたが、言い換えればバッテリーを交換するとハイブリッド車も目安以上に走行できる可能性があるということになります。
また、保証期間を過ぎたバッテリーが故障した場合も交換が必要になります。
ここで、駆動用バッテリーと補機バッテリーの交換費用をご紹介します。
駆動用バッテリー交換費用
駆動用バッテリーの交換費用は、バッテリーの「種類」と「容量」によって異なります。
軽自動車(スズキ スペーシア、日産 ルークスなど)の「マイルドハイブリッド」の相場は5万円〜15万円前後。
普通車(トヨタ プリウス、ホンダ フィットなど)の「ストロングハイブリッド」の相場は20万円~60万円前後です。
メーカーや車種により部品代金に差はありますが、ストロングハイブリッドに比べマイルドハイブリッドは、バッテリーが非常に小型・低容量で、交換作業も比較的簡易なため交換費用も抑えられています。
なお、駆動用バッテリーの内部には高電圧が走っており、整備するには専門の有資格者となるため、駆動用メインバッテリーの交換は、ディーラー、カー用品店(メンテナンス設備のあるお店)、整備工場に依頼することになります。
補機バッテリー交換費用
補機バッテリーの交換費用の目安は、部品代金と工賃を含めて3万円~4万円。
メインの駆動用バッテリーとは異なり容量の大きいものは必要ではないため、部品代金はメーカー純正品で3万円~、適合品で1.5万円~となっています。
ディーラー、カー用品店(メンテナンス設備のあるお店)、整備工場で交換を依頼できますが、車検のタイミングなど定期点検時に併せて交換すると費用を抑えられるのでおすすめです。


ハイブリッド車バッテリーのメーカー保証


車のバッテリーには、メーカー側が「バッテリーを安全に使うことができる」と判断している期間として、必ず保証期間が設けられています。
ただし、メーカーにより細かな保証規定や保証部品に違いがあるので注意しましょう。
普通車(ストロングハイブリッド)の駆動用バッテリー保証
■【トヨタ】HV機構保証
新車から5年間または10万km走行時点のいずれかの早い方まで。
駆動用バッテリーを含むハイブリッドシステムの基幹部品が対象となっている点が、ユーザーにとって大きな安心材料となっています。
| 特別保証部品例 ハイブリッドトランスアクスル/スタータージェネレーター・メインバッテリー(駆動用電池)/インバーター/DC-DCコンバーター/ハイブリッドコントロールコンピュータ/バッテリーコンピュータ/冷却装置など |
■【ホンダ】e:HEVシステム保証
新車登録日から5年間。ただしその期間内でも走行距離が10万kmまで。
駆動用バッテリーやHV制御コンピューターなど、ハイブリッドシステム全体が対象。
車を走行させる上で中核となる高電圧システムであり、万が一の故障に備えて特別保証が適用されています。
| 特別保証部品例 メインバッテリー(駆動用電池)/ハイブリッドトランスアクスル/PDU(パワー・ドライブ・ユニット)/高電圧ケーブル/ECU(コントロールユニット)/ICレギュレーターなど |
■【日産】e-POWERシステム特別保証
新車登録日から5年間。ただしその期間内でも走行距離が10万kmまで。
この保証は、e-POWERシステムが搭載されているノート、セレナ、キックスなどのハイブリッド車が対象です。
e-POWERシステムは、通常のHV(ハイブリッド)とは異なりシステムが比較的シンプルとなるため、保証対象の焦点は高電圧バッテリーと電力の変換・制御を行うユニット、そして駆動を担うモーターに置かれています。
| 特別保証部品例 リチウムイオンバッテリー/インバーター/電動モーター/発電機/各種コントロールユニットなど |
軽自動車(マイルドハイブリッド)の駆動用バッテリー保証
■【スズキ】マイルドハイブリッド専用部品保証
新車登録から8年間。ただしその期間内でも走行距離が16万kmまで。
「マイルドハイブリッド専用部品保証」は、国内自動車メーカーの中でも特に長期にわたり、マイルドハイブリッドシステムの中核部品を保証しており、通常の「特別保証部品」(5年または10万km)よりも長く、マイルドハイブリッド車を長期間安心して保有できる大きなメリットとなっています。
| 特別保証部品例 リチウムイオンバッテリー/ISG/DC/DCコンバーター/各種コントローラーなど |
■【日産/三菱】特別保証部品(リチウムイオンバッテリー等)
新車登録日から5年間。ただし、その期間内で走行距離10万kmまで。
日産と三菱の軽自動車は共同開発されており、搭載されているマイルドハイブリッドシステムは共通です。
ただし、三菱車にはリチウムイオンバッテリーに特化したさらに長い保証が設定されている場合があります。
| 特別保証部品例 リチウムイオンバッテリー/ISG/DC/DCコンバーター/バッテリー制御関連部品など |
■【スバル】e-BOXERシステムの特別保証
新車登録から8年間。ただしその期間内でも走行距離が16万kmまで。
スバルのe-BOXERシステムは、厳密には「ストロングハイブリッド」と「マイルドハイブリッド」の中間、またはマイルドハイブリッドの進化形に位置づけられます。
スズキのマイルドハイブリッドと同様に、非常に手厚い長期保証となっています。
| 特別保証部品例 リチウムイオンバッテリー/駆動用モーター/パワーコントロールユニット(PCU)/各種ハイブリッド制御コンピューターなど |
よくある質問


ハイブリッド車のバッテリーについて、よくある質問をご紹介します。
ハイブリッド車のバッテリーはどうして2つなのか?
ハイブリッド車は、ガソリン燃料を燃やして生じる動力を得るものと、電気モーターの回転で発生するエネルギーとの2つの動力源を使い分けて走る自動車です。
動力源の電気モーターを動かす「駆動用のバッテリー」と、ガソリン車と同じような働きを補助する「補機バッテリー」が必要となるため、ハイブリッド車のバッテリーは2つ搭載しています。
車のバッテリーの電圧が低いとどうなるのか?
バッテリーの電圧が低下するとエンジンがかかりにくくなり、アイドリングストップ機能も働かなくなるなど様々な症状が発生します。
また、放電状態が続くとサルフェーションにより回復が難しくなるため、定期的な走行充電を心掛けましょう。
一度上がったバッテリーは使えないのか?
寿命や内部故障以外の理由でバッテリー上がりがあった場合は、充電すれば再度使用できる場合もありますが、一度上がってしまったバッテリーは充電しても以前の性能は発揮できません。
2年以上ご使用になったバッテリーの場合は交換をお奨めします。
ハイブリッド車の割合
ハイブリッド車(HV)というカテゴリ全体で見た場合、「普通車HV」と「軽自動車HV」の割合はどれくらいなのでしょうか?
2024年の販売台数で算出すると、普通車HVが販売台数全体の約60%に対し、軽自動車HVは軽自動車全体の約40%。
これは、トヨタの「プリウス」や「アクア」といった車種が築いた「ストロングハイブリッド」が、日本のHV市場の基礎であり、その歴史に起因しています。
しかし、近年の軽自動車におけるハイブリッド車の割合の推移を確認すると、2019年以前では20%台前半だった割合も、近年では40%前後。
軽自動車HVは、「技術的な最適解」と「市場ニーズへの対応」により、わずか数年で普通車HVに迫る勢いで増加していることが分かります。
最後に人気軽自動車HVを紹介しましょう。
スペーシア


スーパーハイトワゴンの人気車。
マイルドHVによる高い燃費性能と、静かでスムーズな発進・再始動が評価されている車です。


ハスラー


SUVのような個性的なデザインと遊び心のある内外装が人気の車です。
全車マイルドHV搭載で、燃費性能も確保しています。


ルークス


軽自動車初の高速道路での運転支援技術「プロパイロット」を搭載し、長距離運転の負担を軽減。
マイルドHVで燃費も向上した注目の車です。


まとめ


今回は、ハイブリッド車の寿命について解説し、バッテリーを長持ちさせるコツと交換の目安や費用、各メーカーの保証内容をご紹介しました。
ハイブリッド車はエンジン車とは異なり、バッテリーの寿命が近づいているサインを見極めるのは難しいといわれています。
年々性能が上がっているハイブリッド車のバッテリーですが、長く使用すればどうしても性能は劣化してしまいます。
突然のバッテリートラブルを防ぐために、定期点検を受けて早めに交換しましょう。
また、車検のタイミングで交換を検討することもおすすめです。
普通車だけでなく軽自動車にもハイブリッド仕様が増えている現在、必要な知識や情報は手に入れておきたいものですね。
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