「CVT」というトランスミッション方式をご存知ですか?
耐久性の向上や生産コストの低さから、近年多くの車に採用されているトランスミッション(変速機)です。
手動(MT)か自動(AT)かで分けると、CVTも車が「自動」で変速操作を行ってくれるためATと似た機能となりますが、構造でみると従来のATとは全く異なっています。
今回は、CVTの仕組みや特徴をATと比較しながらご紹介します。
この記事を読んでわかること
- CVTの特徴と仕組み
- CVTとATのメリットデメリット比較
- CVTのメンテナンス
目次
トランスミッションとは
そもそもトランスミッションとは、どんなパーツなのでしょうか?
トランスミッションとは、エンジンから出力される駆動力を車輪へと伝える装置のことで、別名「変速機」とも言われています。
自動車の速度や負荷に応じて変速し、必要な動力を作る機能を担っています。
車を動かすのに必要なトランスミッションの種類は幾つかありますが、機能性で大きく分けるとドライバー自身が切り替え操作を行う「手動変速機」のMT(マニュアルトランスミッション)と、車が自動で切り替えを行う「自動変速機」のAT(オートマチックトランスミッション)の2つ。
昔はMT車が主流でしたが、20世紀後半からAT車が急速に普及し、現在ではほとんどの車がAT車です。
普通自動車免許のAT限定とは「オートマチック限定」の通称で、オートマチック車(AT車)に限って運転できる限定条件付きの普通自動車免許を表します。
CVTって何?どんな車なのか?
CVTは「Continuously Variable Transmission(コンティニュアス ヴァリアブルト ランスミッション)」の略で、日本語では「無段変速機」または「連続可変トランスミッション」と呼ばれています。
AT(オートマチックトランスミッション)と同様に、アクセルペダルとブレーキペダルのみで運転操作し、車が「自動」で変速操作を行ってくれます。
CVTは、パワー伝達のロスが大きいことから、スクーターや原動機付自転車、軽自動車などエンジン出力が小さな車に装備されていました。
しかし、技術開発が進んでベルトの形状や強度が増したことや、大出力エンジン用に強化されたベルトが開発されたため、大出力のエンジンでも充分に対応できるようになり、いまやCVTは、一般の乗用車からSUVにまで普及しています。
CVTとATの構造や仕組みの違いとは?
ATと同じく、自動で変速操作を行ってくれるCVTですが、構造でみるとATとは仕組みが全く異なっています。
ここで、構造の違いについてCVTとATを比較しながら説明します。
CVT
入力と出力の2つのプーリー(滑車)とベルト(またはチェーン、トロイダル)の組み合わせで、無段階かつ連続的に変速を行います。
段数的に変速するATを「有段変速機」と呼ぶのに対し、連続的に変速するCVTは「無段変速機」と言われます。
ギア段の概念がなく常に最適なギア比で走行する装置です。
CVTはプーリーと呼ばれる滑車が、エンジンの回転を伝える回転軸と、車輪に駆動力を伝える駆動軸にひとつずつ取り付けられ、プーリーの幅を変えることによって変速する仕組みになります。
CVTにはベルト式、チェーン式、トロイダル式など構造の違いによって種類はありますが、現在は金属ベルト式が主流となります。
AT(ステップ式)
通常ATのトランスミッションには、歯車の集合体である「遊星ギア」が2~3セット内蔵されており、入力軸と出力軸の回転数を変えることでギア比を変え、段階的に変速を行います。
遊星ギアは、中央にある「サンギア」、サンギアの周りを等間隔に配置された「ピニオンギヤ」、外周の内側にギアをもつ「リングギア」の3種の歯車構成されており、この3つのギアのどれを回転するか、固定するかで動きが大きく変わります。
近年はCVTの普及により搭載車種が減少していますが、依然として多くの車種に搭載されている装置です。
CVTのメリットデメリット
2つのプーリー(滑車)とベルトの組み合わせで、変速するCVTの特徴は何でしょうか?
メリットとデメリットに分けて、その特徴をご紹介します。
CVTのメリット
◆滑らかな走行
CVTは無段変速のため、変速ショックや振動が極めて少なく、滑らかな走りを実現します。
特に、ストップ&ゴーが多い街乗りにおいてその特徴を実感するでしょう。
◆燃費の良さ
CVTは、エンジン回転数を常に最適な状態に保つことができるため、AT車よりも燃費性能に優れています。
近年では、ハイブリッドシステムとの組み合わせにより、さらに燃費性能を向上させたCVTも開発されています。
◆車両価格を抑えやすい
変速の段数を多く設定しているATと比べると低コストで生産できるため、車両価格を抑えやすい傾向にあります。
CVTのデメリット
◆高速走行が苦手
CVTは、エンジンが高速回転になるとプーリーのベルト部分に負担がかかるため、高速走行では燃費が悪くなります。
◆ハイパワーエンジンには不向きベルトの摩擦力によって動力伝達を行うので、大排気量車のようなハイパワーエンジンには装備できない場合があります。
ATのメリットデメリット
ギアの組み合わせ制御によって変速するATの特徴は何でしょうか?
メリットとデメリットに分けて、その特徴をご紹介します。
ATのメリット
◆運転のしやすさ
ブレーキとアクセルだけで運転できるため楽に感じるでしょう。
操作ミスによるエンスト(エンジンストール)がほとんどないので、運転に不慣れな方や高齢者、女性の方にも比較的乗りやすい車になります。
◆ハイパワーエンジンにも対応可能
パワーの大きな車にも対応でき、高級車のトランスミッションは、ほぼATを採用しています。
低速域から力強い加速性能を発揮することができます。
ATのデメリット
◆運転のしやすさ
AT車は操作性が少なく、アクセルを踏めば発進や加速してしまうため、踏み間違いによる急発進の危険性があります。
◆内部構造が複雑である
内部構造が複雑であるため同等クラスのMT車より車両価格が高い傾向にあります。
◆乗り心地
段階的に変速するため、ギア段の切り替え時にショックや振動が発生することがあります。
近年では、改良が進みショックが軽減されていますが、低速域から高速域へのシフトアップ時や、急加速のシフトダウン時などは気になるかも知れません。
CVTとATどちらを選ぶのがよいのか?
CVTとATは、どちらが優れているとは一概に言えず、車の用途やユーザーの好みによって最適なトランスミッションは異なってきます。
ここではトランスミッションの特徴を活かした一例をご紹介します。
CVTに向いている
・燃費効率を重視する方
・滑らかな乗り心地を重視する方
・静寂性を重視する方
・街乗り中心でお使いになる方
ATに向いている
・低価格車種を求めている方
・シンプルな操作性を求めている方
・加速性に力強さを求める方
・長距離運転や高速走行、オフロード走行が多い方
CVTのメンテナンス
CVTは、使われている金属ベルトの耐久性が格段に向上したことにより、基本的にメンテナンスは必要ありません。
しかし、まれにベルトが伸びてしまうトラブルやプーリーとベルトの摩耗が原因でエンジンに異音が発生するなど、故障の前兆と考えられる現象などが発生することがあります。
メンテナンスが必要ないとはいえ、燃費性能や加速性能が低下などの不調を感じたら、カーディーラーや整備工場で点検してもらいましょう。
CVTフルード(オイル)の交換
CVTフルードは、エンジンのオイルと同様に劣化するため、定期的に交換が必要です。
交換時期は車種によって異なりますが、一般的には4万km~6万kmごとと言われています。
ベルト・チェーンの点検・交換
CVT車はベルトやチェーンを使って動力を伝達するため、定期的に点検・交換が必要です。点検・交換時期は車種や使用状況によって異なりますが、一般的には10万km~15万kmごとと言われています。
CVTフルードとは
CVTフルードとは、CVTの機能を潤滑にするために搭載されている専用のオイルで、劣化を伴う消耗品になります。
AT車に使用されているATF(オートマチックトランスミッションフルード)と同様に、以下の役割を担っています。
・エンジンのパワーをタイヤに伝達しやすくする
・エンジン内部の各装置を油圧で作動させる
・エンジン内部の焼き付きを予防する
CVTのよくある質問
最後に、よくある質問をご紹介します。
CVTにクリープ現象は起こるのか?
クリープ現象とは、エンジンをかけてDレンジに入れた状態で、ブレーキを踏まずにいると車がゆっくりと動き出す現象です。
これは、トルクコンバーターがエンジンの力をタイヤに伝えているため発生する、いわばAT車の特徴です。
CVT車はトルクコンバーターではなく、ベルトやプーリーを使って動力を伝達するため、Dレンジに入れていても車が動き出すことはありません。
しかし、近年発売されている一部のCVT車には、内部の油圧制御システムを使って疑似的なクリープ現象を発生させる機能が搭載されているものがあります。
疑似的なクリープ現象が搭載されているメーカーごとの車種一例
・ホンダ:フィット、フリード、ステップワゴンなど
・日産:セレナ、ノート、リーフなど
・トヨタ:アクア、プリウス、シエンタなど
CVTとATを見分ける方法
CVTとATを見分ける方法で最も簡単な方法は、シフトレバーの形状を確認することです。
シフトレバー表記(一例)
トランスミッション | シフトレバー表記 |
---|---|
CVT車 | P(パーキング)、R(リバース)、N(ニュートラル)、 D(ドライブ)のみに加え、L(ロー)やS(スポーツ) |
AT車 | P、R、N、Dに加え、2、3、4などの数字 |
ただし、近年ではATであってもアルファベット表記のシフトレバーを採用している車種もありますので、確実に見分けられるわけではありません。
取扱説明書や車種情報を確認することで確実にトランスミッションの種類を見分ける事ができます。
CVTの仕組みや特徴まとめ
CVTは、滑らかな変速、燃費性能などのメリットを持つ一方、高速走行、対応規模などのデメリットもあります。
ATとどちらが優れているとは一概に言えず、車の用途やユーザーの好みによって最適なトランスミッションは異なってきます。
また、同じ車種で「CVTとATから好きな方を選べる」というケースは無いため、車選びは車種の好みを基準に選ぶとよいでしょう。
トランスミッションの違いに限らず、乗り心地や操作性は人によって好みが分かれます。
気になる車種があれば、実際に乗り比べてみることをおすすめします。
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