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電気自動車(EV)にトランスミッションを搭載する理由は?EVの構造とトランスミッションとの関係性を詳しく解説!

電気自動車(EV)にトランスミッションを搭載する理由は?EVの構造とトランスミッションとの関係性を詳しく解説!

温室効果ガスであるCO2排出を抑え、地球環境に貢献する次世代自動車として大きく注目が集まっている電気自動車(EV)。

電力を用いて走行する構造上トランスミッション(変速機)を搭載する必要はなく、EVの普及に伴い、トランスミッションはその役割を終えるかと思われました。

しかし近年のEV開発とともに、トランスミッションを搭載したEVが少しずつ登場しています。

一体なぜ、必要ないと言われるトランスミッションをEVに搭載するのでしょうか?

今回はEVの構造を照らし合わせながら、トランスミッション搭載車が登場した理由を解説し、EVとトランスミッションの関係性を解説します。

この記事を読んでわかること

  • EVの駆動力と変速の仕組み
  • EVにトランスミッションを搭載する理由
  • 変速機と減速機の違い

トランスミッションの役割とは?

ランスミッションのギア(歯車)パーツ

トランスミッションとは、エンジンから出力される駆動力を車輪へと伝える装置のことで、別名「変速機」とも言われています。

例えば、小さな歯車が大きな歯車を回すと大きな歯車はゆっくりですが力強く回り、逆に大きな歯車が小さい歯車を回すと小さな歯車は速く回るけれど力は弱くなります。

この原理を基に、歯車(ギア)を複数組み合わせたものがトランスミッション。

エンジンの回転数を増やして駆動力を生み出し、ギアを使ってエンジンからの駆動力を増減させながら、車の速度域を広げる役割を担っています。

EVとは? 

充電中の電気自動車

「EV」は「Electric Vehicle」の略で、電気自動車のことです。

エンジンを使用せず、車載バッテリーに蓄えた電力からモーターを動かし走行しているため、走行中に二酸化炭素や有害物質を排出しません。

また、静粛性や加速性能にも優れており、エンジン車に比べて滑らかな走りを楽しむことができます。

環境性能においてはトップクラスのエコカーです。

EVには下記3種類が挙げられます。
BEV(Battery Electric Vehicle):バッテリーのみで動く車。最も一般的なEVです。
PHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle):バッテリーとエンジンを搭載。充電切れの場合はエンジンで走行もできます。
FCV(Fuel Cell Vehicle):水素を燃料とし、化学反応で発電した電力で走行する車です。

近年のEVやPHEVのバッテリーは数百kmもの長距離走行に対応できるほど大容量になっていますが、充電できる場所がまだ十分ではなく、充電にも時間を要するためバッテリーあがりには注意が必要です。

EVの駆動力と変速の仕組み

車の構造(透過図)

先述した通り、トランスミッションはエンジンからの駆動力を増減させながら、車の速度域を広げるのが役割です。

しかし、EVにトランスミッションは必要ないと言われています。

ではトランスミッションを搭載しないEVは、どの様にして駆動力を増減しているのでしょうか?

それは、トルク(タイヤを回転させる力)の生み出し方に関係します。

EVは、車載バッテリーに蓄えた電力からモーターを動かし走行しています。

モーターは起動時から最大のトルクを発生することができるので、アクセルを踏んだ量に応じてモーターに電力を流すことが可能です。

回転数が高まるにつれトルクが低下していく特性と、電流の制御装置で速度調節を行う設計により、変速機である「トランスミッション」は必要ないとされていました。

しかし、近年では「不要」と言われてきたトランスミッションを搭載する車が少しずつ登場し、2023年東京オートサロンでは、クラッチペダルやシフトレバーを搭載したEVも展示されました。

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EVにトランスミッションを搭載する理由

山道を走る車両

低速域から高トルクが生み出せるモーターの特性や技術を活かし「変速機なし」で設計されていたEVですが、次のようなニーズに答える形で高性能や悪路走破性、牽引力などを重視する一部の車種から変速機を搭載したEVが登場しています。

走行性能の効率化

モーターは回転数が高まるにつれ、トルクが低下していく特性があります。

トランスミッションによりギアを変えることで、効率的な回転域でモーターを動かすことができます。

また、モーターの大きなトルクは発進時のような低速域では、道路のコンディションにより路面に伝え難い場合があるため、トランスミッションを介することで低速域でも有効なトルクを得ることが可能

加速の強力さや走行速度の最適化により、航続距離が延びることに繋がります

走りを楽しめる操作性

トランスミッションを搭載することで、手動でギアチェンジを楽しむことができます。

車を走らせることに楽しみや爽快感を感じている人には、自分で車をコントロールできる感覚をダイレクトに味わえるはず。

また、走行性能の向上が見込めるため、よりスポーティーな走行を体感できます。

なぜ全てのEVにトランスミッションが搭載されないのか?

車のおもちゃとお金

日常生活での使用を重視する街乗り向きEVにはほとんど搭載されていません。

走りを楽しむ他に「航続距離」が延びることも期待されているのに、なぜ全てのEVにトランスミッションを搭載しないのでしょうか?

モーターで対応可能

低速域から高いトルクを生み出すモーターは、路面に伝え難い場合があるとはいえ、発進時や加速時にもトランスミッションの役割を代替することができるため、街乗り向きEVには搭載されていません。

価格と車両軽量化の壁

トランスミッションは高価なパーツとなるため、搭載することでそのまま車両販売価格にも反映され、購入しにくい価格設定になる可能性があります。

また、車体の軽量化やメンテナンスの向上を図るうえでも、部品点数をできるだけ少なく抑えた構造が望ましいとされています。

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変速機ではなく減速機を搭載

家族でドライブ中の車内風景

EVは回転数が高まるにつれトルクが低下していく特性のため、低速ギアを設定する必要は無いのですが、逆に言えば高回転域で「もうひと伸び」が難しくなります

また、高回転域をキープする上でもトランスミッションの設定は有効です。

しかし、前項で述べたようにコストや重量などクリアしなければならない課題があります。

そんな中、現段階では「変速機」ではなく「減速機」を搭載したEVがほとんどです。

変速機と減速機の違い

従来トランスミッションは「変速機」として、回転速度を変化させる役割を持った機構です。

エンジンの回転力を、車速や走行状況に合わせてギア比を変えることで、必要な回転数とトルクに変換します。

一方「減速機」は、歯車などの使用によって回転速度を落とす役割を持った機構です。

回転速度を一定に保ちたい機械に使用されることが多く、速度を落とす代わりに大きな力を出すことが可能です。

どちらも回転速度やトルクを変える機構で、減速機はトランスミッションの一種と考えることもできますが、機能や用途、構造などに違いがあるため、厳密には区別されています

減速機を搭載する理由

減速機を介してギア比を変えることで、低速域でも必要なトルクを発生させられますので、発進時のトルク不足の不安が解消されます。

例えば、坂道発進や重い荷物を積載した状態での発進などでは、減速機の効果が顕著です。

また、機能が限定されている分、構造や制御機構もシンプルで、コストも低くなります

変速機と減速機の種類

つづいて、変速機と減速機の特徴とシュッ類を比べてみましょう

機構特徴種類
変速機複数の歯車とシャフトで構成された複雑な構造MT(マニュアルトランスミッション)、AT(オートマチックトランスミッション)、CVT(コンティニュアスリー・バリオブル・トランスミッション)など
減速機基本的にはシンプルで、歯車とシャフトが組み合わされた構造遊星歯車減速機、ウォーム減速機、歯車減速機、傘歯車減速機など
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日本のEV普及率は?

EVの新車販売台数推移
出典:一般社団法人 日本自動車販売協会連合会

EVとトランスミッションの関係性を解説してきましたが、そもそも日本においてEV普及率はどれくらいなのでしょうか?

日本自動車販売協会連合会の発表によれば、EVの新車販売台数の推移(2020年~2023年)を確認すると、少しずつ増加傾向にあることが分かります。

EVは価格が高額なため購入をためらう人も多い反面、停電時の非常用電源として活用できるなどメリットもあるので、EVを購入するための補助金制度を活用し購入しているようです。

補助金制度は、国と自治体それぞれに設けています。

◆補助金制度の一例
・国の補助金制度「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金(CEV補助金)
・東京都の補助金制度「令和6年度 東京都ZEV普及促進補助金
・埼玉県の補助金制度「令和6年度 埼玉県電気自動車等導入費補助金事業

静かすぎて物足りない?

車を運転する男性

ここで近年のEV動向を紹介します。

エンジンを搭載しないEVは、当然ながらエンジン音がなく「無音」に違い状態です。

静かな車を好む人には魅力的に映る反面、静かさに違和感や物足りなさを覚える人もおり、新たなEVの価値として「音」の有無に注目が集まっています

また、EVはエンジンによる音や振動がないため、変速時のショックが目立ってしまうこともあります。

数年前まで「無音」がEVの魅力の一つでしたが、近年ではエンジン音の変わりに擬似的な「音」を出す技術開発が各メーカーで進んでいます

まとめ EVとトランスミッションの関係性

2050年CO₂ゼロイメージ画像

日本政府は「2050年に自動車の生産、利用、廃棄を通じた CO₂ゼロを目指す」と掲げており、世界的にも走行時に二酸化炭素や有害物質を排出しないEVの普及を促進するための政策も取られています。

トランスミッションによって、加速の強力さや走行速度の最適化により電費が良くなれば、航続距離が延びバッテリー容量を小さくすることも可能です。

高価で重量のあるバッテリーが小さくなれば、軽量化やコストダウンも繋がります。

ユーザーニーズの変化に合わせて進化する価値観とEVの技術革新とで、トランスミッションの役割や必要性も変化していくことが予想されます。

日常生活での使用を重視するEVにトランスミッションがどう関わるか注意深く追ってはいかがでしょうか。

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